2017.5.6
【熱くもなく、冷たくもない…燗酒の魅力】
みなさーん、こんにちわ。 店主の石田です。 本日は燗酒の魅力について、じっくりと書いてみたいと思います。日本酒は、世界的に見ても珍しい酒と言われることの一つに、飲用温度を上げて飲むことがあります。 確かに、ワインやビールを温めて飲む場合もありますが、どちらかと言うと、スパイスやはちみつを入れてカクテルとして飲みます。 また、焼酎のように、お湯を入れて温度を上げるのではなく、お酒そのものを温めて飲みます。 温度を変えて、味わいを変化させて飲むのは、日本酒の醍醐味の一つと言ってもいいでしょう。 通常、我々がお酒を飲む時に意識するのは、下記の3つぐらいの温度帯です。 冷酒 5℃~15℃ 常温(冷や)15℃~30℃ 燗酒 30℃~60℃ 昔は冷蔵庫がなかったので、『冷や』と『燗』しかありませんでした。 この場合の『冷や』は常温のことです。 今でも時々、『冷酒』と『冷や』を混同されている方がいます。 『冷や』と言ったら常温のことであって、『冷酒』のことではありません。 ですから、もしお店でお酒を飲む時に、温度帯を指定するのなら、 「○○を冷やで」 と言ったら常温できます。 もし冷たくして飲みたいのなら、 「○○を冷酒で下さい」 と伝えて下さい。 ただし… 現代で、お酒を『冷や』で飲む人は非常にまれです。(個人的には好きなんですが…(笑)) たいてい、冷酒か燗酒です。 しかも、どちらかと言えば、冷酒の方のほうが多いです。 ですから 仮に間違って 「○○を冷やで下さい」 と言っても、お店の人が気を利かせて、冷酒で出してくれたり、 「冷酒でよろしいですか?」 と聞き直してくれると思います。 どうしても『冷や』で飲みたい場合は 「○○を常温でください」 と伝えれば、確実です。 さて、いつごろから、我々は燗酒を飲むようになったのでしょう。 正確には理解っていませんが、平安時代中期頃と言われています。 また、江戸時代の頃は、燗酒を飲んでいたのは、 9月9日(菊の節句)~翌年の3月3日(桃の節句) と言われ、それ以外の時期は、『冷や』で飲んでいたと言われています。 昔は『燗鍋 』と言って、大きな鍋に酒を入れて、直火で温めていました。 でも、それでは温度調節が難しいということで、1合徳利や2合徳利で湯煎するようになったのです。 温度の呼び名もそれぞれあります。 5℃ 雪冷え 10℃ 花冷え 15℃ 涼冷え ~~~~~~~~~常温(冷や) 30℃ 日向燗 35℃ 人肌燗 40℃ ぬる燗 45℃ 上燗 50℃ 熱燗 55℃ 飛び切り燗 5℃刻みでこんなに呼び名があるのは、日本酒ならではの、風情があります。 情緒がありますね~ ただし、これも現代では、注文する時に 「○○を雪冷えで」 とか 「○○を花冷えで」 と言う方はほとんどいません。 最初に上げた3つの温度帯を知っていれば大丈夫です。 だけど、もし燗酒を飲むのであれば、もう少し、詳しい温度帯を伝えたいところです。 燗酒の種類だけでも 30℃~55℃と25℃の温度差がありますので、同じお酒でも、30℃の人肌燗で飲む味と、55℃の飛び切り燗で飲む味では違いが出てきます。 しかも、皆さん 『燗酒』=『熱燗』 と思っている方が多く、 「○○を熱燗で下さい」 と言うのは、 『○○を50℃に上げて下さい』 という意味で言っているのではなく 『○○をお燗して下さい』 という意味で言っている方がほとんどです。 ですから、お店の人が気を利かせて 「温度帯のご希望はありますか?」 と尋ねてくれるお店はいいお店です。 そうしたら、 「ぬる燗でお願いします。」 とか、 「温度帯はおまかせします」 と言えばよいのです。 逆に何も言わずに燗酒が出てきたら、テキトーにやっているかもしれません(笑) また、お店によっては、冷酒しか置いてないところもあります。 逆に、燗酒しかない燗酒専門店もあります。 色々な温度を試してみようというときは、残念ですが、 今日は冷酒だけとか、燗酒だけと決めているのなら、もってこいです。 ただし、現代では、冷やして飲んだほうが美味しいと言われる、吟醸酒や生酒の人気が多いせいか、 燗酒にこだわる方が少なくなっている気がします。 季節にもよりますが、冷酒と燗酒を求めているお客様は 8:2ぐらいの割合でしょうか… ちょっぴり寂しい感じがします。 だけど、燗酒の魅力に気づくと、日本酒の面白さが一気に広がりますよ。 さらに真夏に燗酒で飲む人は、もっと少ないです。 (実は私のオヤジが真夏でも燗酒で飲む人で、昔は理解に苦しみました(笑)) では、燗に向く酒とはどういうお酒なのでしょう 一般的に、日本酒は温度を上げると、舌触りがなめらかになります。 甘味、酸味、苦味などのバランスも良くなり、旨味が増えます。 どっしりした味わいのタイプのお酒は燗酒に向いています。 難しい専門用語を使わずに言えば、 昔ながらの日本酒 酒臭い日本酒(笑) しっかりしたタイプ という言い方ができます。 少し専門用語を使えば、 旨味や酸が高い『濃醇 』タイプ 昔ながらの生もとや山廃のようなコクのあるタイプ という言い方ができます。 では、それ以外のお酒は燗酒に向いていないのかというと、そうでもありません。 確かに、大吟醸に多い、繊細な香りのお酒は不向きといえます。 だけど、同じ大吟醸でも、ぬるめの燗でフルーティな香りを楽しめるものもあります。 生酒も基本的には冷酒で飲むと言われますが、しっかりしたタイプであれば、燗にしても美味しい酒がいっぱいあります。 生酒の燗、生燗も大いに結構です。 さらに、純米酒や本醸造の中には、冷酒、常温、燗酒、どの温度帯でも美味しく飲めるお酒があります。 また、熟成の進んだ古酒も人肌燗にして飲むのも良いです。 家で飲むのなら、どのお酒を燗酒にしようが個人の自由ですので、色々チャレンジしてみるのもオススメします。 ただし、もし家で燗酒を飲むのなら、ちょっと面倒でも湯煎をオススメします。 均一に温まるからです。 温度計などなくても、お酒は温まると膨張するので、量が増えたと思えたところで取り出して飲んでみて下さい。 ちょうどよい感じになるとおもいます。 ちょっとぬるいなと感じたら、もう少し温めると美味しい温度帯になるはずです。 簡単ではありますが、電子レンジでは、ムラができてしまうので、あまりオススメしません。 どうしてもの場合は、途中で酒器を何度か揺らしながら、なるべく均一になるように温めると良いでしょう。 『燗』という漢字をよく見ると 『火』の『間』と書きます。 熱くもなく、冷たくもない、ちょうどよい温度という意味でつけれらたそうです。 これもまた風情がありますね~ 本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。